夏焼依子の「三億円少女」を観て来たよ

BluePhobos2010-10-25

10/16 に夏焼雅が主役を演じる「三億円少女」大阪公演を鑑賞して来たよ。この舞台に関しては、東京公演を鑑賞したファンによる大絶賛の声だけは耳にしつつ、三億円事件がテーマであることと主役が「依子」という名前の女の子であること、そしてレインボー主演であるといった程度の情報のみをインプットしてのゲキハロ初鑑賞、という身だったこともあり、新鮮な気分で楽しめたというのが大きいかな。正直、メンバーの演技力を特に楽しみにしていた点が大きくて、歌と演劇は共通点こそあれどやはり別物ということで発声とか感情の表現力、リアクションあたりが気にはなっていたのだけれど、彼女たちのそれは予想を遥かに上回るレベルだった。


雅が主演の公演を選んだ理由は特にないのだけど、何と言うか表現力という点では梨沙子が濃口だとすると雅は薄口なイメージがあり、さらに「口」繋がりであまり利口でない(笑)イメージも少しはあってそれが演劇、特にシリアスな場面では彼女は何口になるのか、といったあたりが見たかったというのが一つある。歌はさらっと歌うけれど劇はさらっと演じる、なんてふうにはイカンと思うので。ということで、脚本や演出よりもバリバリの個人とか個性観点ですが、気になった点だけ抽出して書いてみました。

主役・依子役の夏焼雅について

とにかく「気の利く強くて可愛い女の子」になりきろうとする姿勢のようなものがよく伝わって来た。ただ、薄口感は所々出ていて未来の見慣れぬモノに対して唖然としたり一朗にガッツくところは、もっと大袈裟にやっても良かったのかなと思う。声量と広島弁は良かった。あと、若干早口だった気がするので間を武器にすると良いのかも……、といったここ数年見続けている大河ドラマの影響をモロに受けた感想は置いておいて、アフタートークショーでは「依子はホントに可愛いので仕草とかを真似しようと思うけどメンバーからはキモイと言われそう」と言っていて、実際は声のトーンも劇中は終始高かったあたり、多少は桃子を意識していたのかも知れないなぁなどと思った。ただ、同じくアフタートークショーでのか細い声での「泣きそうですぅ……」は雅ヲタでない自分からも果てしなく可愛く見えた。前述の桃子的な可愛さとはまた違った次元の。まぁ、こういう自分は女の涙にはめっぽう弱い方なのだと思います、多分。

不良少女・明美役の熊井友理奈について

登場時の感想はベタにデカッ!てなもんで、Q 列から見ても舞台におけるその存在感は凄まじく、まさにセット中央の柱で囲まれた通路に頭が擦りそうな勢いだった。で、そんな長身不良女がスケバンライクなロングスカートで手を叩きながら嘲け笑い、相手を下に見る(まさに文字通りですが)ような口をきくもんだからもう迫力満点。若干恐怖めいた感情が湧いたよ。なんとなく若かりし和田アキ子が醸し出すような「ケンカしたら負けそう」的な。さらに、発声がふわふわしているイメージの強い熊井ちゃんだったのですが、その真逆でかなり声が張ってて驚いた。Berryz工房の中ではこの熊井ちゃんの声が特にデカイ印象が強い。茉麻の声もデカかったけどね。この公演で、身体も声もデカイ女性の迫力が動物学的・生物学的における雌の強さにリンクしたのでした。

板長の娘・糸江役の清水佐紀について

劇中の清水佐紀で印象的なのは、セーラー服姿で食パンをくわえて中央ではにかみポーズをとるという萌え登校シーンと、奈菜美に頼まれて紙芝居で披露した腹話術のシーン。美川憲一または菅井英憲バリの地声で「もうなんなのよぉーさっさと行くわよぉー」で客席に笑いを巻き起こしていたぐらいなのだけど、アフタートークショーや一分劇場とかでのさきみやのカップリング愛に溢れていて単純に仲が良い、だけではなくて、互いをわかり合っている、認め合っている、支え合っているような関係が築けられていると感じた。大袈裟に表現すると以心伝心っぽい感じ。佐紀の求雅力と雅の求佐紀力のどちらが強いのかはちょっと興味あったりするけどね。

佳林役・宮本佳林と奈菜美役・田辺奈菜美について

この二人は共に昭和の女の子と平成の女の子の象徴のような位置付けで、「○○ってなぁに?」といった好奇心旺盛だけどやや控え目でピュアな感じの昭和・奈菜美と、財布を拝借するといったズル賢くて小悪魔な感じの平成・佳林という対比が興味深かった。萌え的観点では、佳林の場合は一人称が一貫して「ちゃん」付けだったことと、間を置いて「ってことはぁー?」をご機嫌に繰り返すシーン、奈菜美の場合は一朗と依子の相合傘を「I と Y」と体現するところと上述の糸江と同じく食パンをくわえて中央でポージングをとるシーンかな。特に後者の奈菜美の演技には「カワイイー」と女性客からの声が聞こえてたっけ。一度噛んだけど、その一噛みで得られる経験値ははぐれメタル級に高かったんでないかなと思う。


下の 1 分劇場は、奈菜美が「すごく……」で言葉を詰まらせるところが印象的過ぎて、ある意味今年脳裏に焼きついた映像の上位に食い込んだ。この沈黙には舞台初挑戦で得られた何かと観客と醸成された一体感を端的に表現する言葉を必死に探したけれどその短時間では決してまとめることができず、結果「イイ」という抽象的な回答をするまでの貴重な過程が収録されており、この沈黙にこそとても言葉では言い表せることのできない彼女が学んだ舞台のいろはと成長した証が詰め込まれている、それを想像するだけでもワクワクする映像であり、彼女のその成長の場を実際に見ることができてホントに良かったと思う。